昨日のSHIBUYA-FM“ELECTRIC ROOTS”、やっててこういうラジオ番組こそやりたかったんだよね、と思いながらいろいろ話をさせてもらった。曲紹介もちゃんとするけど、バックでうっすら曲を流しつつちゃんと話も訊いてもらう番組。こうやって音楽とか、その周辺の話をして、伝えていくということ自体に大切な意味がある。ナビゲーターという、本来は不慣れであろう役回りを敢えて買って出たKensei&Sagaraxx両名の姿勢に最大級のrespect。あと、K-OGEEくんがふらっと自転車乗って聴きに来てくれたりして(そういう感じがあるから生はいい)、ありがとう。
昨日も放送でかけさせてもらったmarter。KenseiさんたちやSHIBUYA-FMの方にも好評で嬉しい。リリースを来週に控え、marterこと山内将輝のインタビューをここに載せます。「どういう人なの? え、日本人!」とビックリされることが多いのだけど、彼の音楽をより知ってもらうきっかけになったら幸いです。
marter interview
――まず、簡単に自己紹介からお願いします。
「山内将輝。東京生まれです。両親の転勤で14歳の時からアメリカに移住し、あちらで音楽のすばらしさに目覚めました。17歳のころから音楽の道へ進むことを決心し、それ以来はエレキベース、キーボード、打ち込み、歌を勉強しつつアルバムを発表させてもらったり、各地でライブをやらさせてもらったりと、とてもいい経験をつませてもらってます。ちなみにスポーツも好きです」
――今回のアルバム『weltraumasthetik』の制作の開始は?
「2006年の12月です。ベルリンのカフェ、教会、バー、クラブなどで、精力的にライブをこなしてきて、いろいろな刺激を受けた結果、少しライブ活動を休憩してアルバム製作に入る決心をしました」
――ベルリンで制作をしたわけですね?
「ベルリン北部のトルコ人街で地下付きのアパートを借り、地下室に軽いスタジオを作ったんです。そこから約半年間ほぼ毎日アルバムのアイディアを貯めるべく曲を作り続けました」
――これまでyamauchi名義でもアルバムのリリースがありますが、それらと今回のアルバム『weltraumasthetik』で、制作面で違いはありましたか?
「MPC1000を初めて使うようになったことです。基本的にベルリンにいた期間はリズムに専念するべくMPC1000で自分のノリで約90トラックほどのアイディアを貯めました。その後、できたリズム同士を混ぜてみたりテンポを変えてみたりなど、DNAの研究者の様な意気込みで自分なりの究極のgrooveを探求してみました」
――その後、日本に戻ってきたのですね?
「2007年の8月に帰国しました。そして、アルバムを形にするべく長野のmonkeyhill studioに約半年間こもりました。今までにできたアイディアを厳選し約10曲分にまとめたのです。歌詞とメロディを書きました。歌詞はできるだけ個人的な事を避けて、人類と地球と宇宙のことを書くように心がけたつもりです。2008年の4月までには歌入れや編集などが進み、アルバムの90%ほどが完成しました。そして6月に九州で軽いツアーをして、かなり良い反応を得られたことで、今回のアルバムへの自信が芽生えました」

――アルバムの制作から、リリースまで、約2年半の時間がかかったことは、いま振り返ってどう思いますか?
「実際は本当に集中していた時期は一年間ぐらいで、間でライブをやっていたり、ほかの仕事をしたりしていたんですが、どういう形で世に出すかという部分で少し時間がかかってしまい、今年になってやっとcordeの原さんと出会うことができてこういった形でアルバムが世に出せることになってとても感謝してます」
――歌詞に込めたことも含めて、アルバムのコンセプトを語ってもらうことはできますか?
「音的な部分では、アメリカ主体の物質、競争社会に変わる、自然協調型の時代を提案すべく、新しいテクノロジーも使っていきながらも人間っぽさ、歌や少し人間的ズレのあるリズム、そしてアナログの良さなどを融合させた音を目指しました。歌詞の内容的には、今までの社会でどれだけ権力者たちに一般市民たちが誘導されて戦争や格差社会に導かれていたかを踏まえつつ、これからはいろいろな意味で大きく人間も変わるべきという提案、そして宇宙の真理に沿って生きれば幸福と真実は自分の中から見つけられるはずということを表現してみました。それは理想の表現でしかないのですが、協調、美、そして幸せを祈ってこの作品を作りました」

――
ミックスマスター・モリスは以前からあなたの音楽を高く評価してきましたが、モリスさんとの出会い、彼から受けたものについて語ってもらえますか?
「モリスさんとの出会いは、2001年ぐらいに青山CAYで僕がモリスさんにEP『樹海』を手渡しした所から始まりました。幸運にも彼がイギリスのラジオでその中から一曲を紹介してくれたのです。そのあと2005年に2枚目の『preferable reality』のマスタリングでロンドンに滞在している間に、モリスさんがDJをしていたbig chill bar で初めてちゃんと会うことができました。そして、その年の夏モリスさん主催でイギリス北部で行われたmaster peace festivalというレイヴでライヴをやらせていただき、そこで思った以上にいい反応があって、自分の方向性に自信が持てたのです。今回のアルバムもモリスさんに送った所、良い感想を送っていただき勇気づけられました」
――もともとモリスさんの音楽が好きだったのですね?
「Irresistible Force名義の2枚は僕にとってのマスターピースであり本当に何回聴いたかわからないほど大好きです。アンビエントの世界ではモリスさんは伝説的な存在で、あの知的でスペイシーなサウンドは今でもまったく色あせることがないほど芸術的だと思ってます。だから、そのモリスさんに自分の音楽を認めてもらえるということはとても光栄なことだと思ってます。彼のいつでもfreshな音を探している姿勢と毎回違う音を聞かせてくれるDJスタイルにはとても刺激を受けます。そして、まだそこまで世に知らされていない若手アーティストたちを紹介していこうという姿勢にも音楽への愛情がひしひしと感じられて尊敬させられます」
――『weltraumasthetik』をリリースをしたことで、今後、どう活動を展開していきたいですか?
「実は2008年に東京で新しく作ったものも含めるともう一枚新しいアルバムを作れる分のアイディアがあるので『weltraumasthetik 2』のようなものをできたら作りたいと思ってます。あとそれらの新曲を試して見たいという意味でもライブをたくさんやりたいです」
marter "weltraumästhetik" (dccd-015) 7/15発売!