日本のCDやレコードを海外(特にヨーロッパ)のショップやディストリビューターが扱うことは年々減ってきているように思います。理由はいくつかあると思うのですが、大きな理由は日本のマーケットをよりシビアに、そして自分たちのマーケットと地続きなものとして見るようになったからではないでしょうか。
かつて、テクノを中心としたダンス・ミュージックが、日本のメジャーなレコード会社から頻繁にリリースされていた時期には、海外のレーベルやディストリビューターにとって、この国は素晴らしい“お客さん”でした。自分たちが良いディールを交わせたから、日本のモノもライセンスしたりディストリビューションしたりしてあげよう、という多少の余裕もあったのだと思います。
しかしながら、日本のマーケットも冷え込み、おいしいディールなど交わせなくなると、海外が日本を見る目は急にシビアになり、本当に自分たちのシーンで売れると思えるものしかチョイスしなくなってきました。“これはいまのヨーロッパのシーンには合わない音だから”というのが典型的な断りの理由として伝えられるのですが、でも、この理由は半信半疑で訊いておくべきでしょう。
確かに、シーンに合わない音もあるのですが、シーンに合っていると思われる音でも、日本との物理的な距離ゆえに排除されてしまうことが多々あります。ライヴ(DJ)が簡単に見られないという単純にして大きな要因はいかんともしがたくあります。
日本はオシムを感銘させるほどのホスピタリティに優れた国ですから、ライセンスにせよ、ディストリビューションにせよ、相手方を思い、最善を尽くそうとしますが、逆の立場になってみると、ここまでいろいろやってくれる国もないでしょう。日本から運良くライセンスをしても、お金を回収できない、なんて話はざらに訊きますし、僕自身も経験しています。日本の音楽を海外に紹介したいから、と志あることを言っておきながら、単なる輸入仲介業者に変節してしまった人も見てきました。そういう出来事がある度に凹むわけですが、あまりに凹むことが多いと、いい加減、タフにもなります(ならざるを得ません)。まだまだやるべきことはたくさんあると思う今日この頃です。